Circumstances
子どもの視力低下
子どもの視力低下が「過去最悪」に・・・
2008年12月、文部科学省が発表した「学校保健統計調査」によると、子どもたちの視力の低下が進んでいる実態が明らかになりました。この調査は、2008年4〜6月に健康診断を受けた全国の幼稚園児から高校生の約330万人のデータから報告されたものです。
それによると、視力が「1.0未満」の幼稚園児の割合は、前年比2.7ポイント増の28.9%。幼稚園児の3人に1人が近視になり始めているという数字はかなり深刻な問題です。その他の小・中・高も視力低下傾向の数字は増加しています。
こうした数字の大きさ以上に目を引くのが、2007年度から2008年度にかけて低下率が増加している事です。視力「0.3未満」の増加率は、幼稚園児で「0.5%⇒0.8%」で60%増、小学生で「6.5%⇒7.1%」、中学生で「20.3%⇒22.4%」とおよそ10%の増加です。こうした数字は今後も更に増加するであろうと懸念されています。
視力1.0未満 | 視力0.3未満 | |
---|---|---|
幼稚園児 | 28.9%(26.2%) | 0.8%(0.5%) |
小学生 | 29.9%(28.1%) | 7.1%(6.5%) |
中学生 | 52.6%(51.2%) | 22.4%(20.3%) |
高校生 | 58.0% | 28.4% |
視力低下の原因は「テレビゲームと早熟化」
このような事実から見て、子どもの視力低下の低年齢化が進んでいる原因として、まずテレビゲーム・パソコンの影響が指摘されます。テレビゲームやパソコンでは、目から近いものを長時間、かなりの集中力で眺め続けます。目の遠近調節を行い、画像を適切な位置に結ぶ役割を担うのは「毛様体筋」と呼ばれる目の中の筋肉です。毛様体筋は近くの物を見る時に収縮・緊張し、遠くの物を見る時に収縮・緊張を解いて調節します。テレビゲーム・パソコンを長時間続けると、大人でも毛様体筋の機能が損なわれ視力を低下させます。これが未だ視力のきわめて不安定な幼稚園児の年齢で行われれば、視力低下しない方が不思議な事と言えます。
また、最近では子どもの成長が早期化しているために、眼球の成長も早くなっており、さらに視力低下しやすい状況に陥っているとされています。早熟化傾向の中、子どもの視力は低下せざるを得ない状況にあるというわけです。
まずは『子どもの目は大人の目と違う』事を親が理解する事。
赤ちゃんは、おぼろげに物が見える程度の視力で生まれ、その後視力を少しづつ向上させていき、5〜6歳で大人と同程度の視力(1.0以上)になります。でもこの視力は、静止した物にピントが合わせられ見れるという状態で、決して大人のように完成された視力ではないのです。本来ならここから更に身体を使った遊びや運動と共にいろいろな視覚機能が育ち、身に付く事で視力として完成していくのです。最近のご両親はこの事をあまり知らずに、自分の世代がゲーム世代なので甘くなり、子どもが喜ぶからとビデオを長時間見せたり、携帯ゲームで遊ばせたりしていると、子どもの目は偏った使い方になり、容易に視力低下(近視)になってしまうのです。また両親共に仕事を持っているケースも多く、その分子どもへの管理が難しいという事情もあります。
しかし子どもの学力や運動力の低下問題をはじめ、視力によるさまざまな弊害を考えると、視力低下を防ぐ配慮をするのはやはり親の責任です。最初は少し視力が悪い近視が数年後に強度近視を招き、将来的に深刻な目の障害を起こさない為にも、子どもの為の習慣教育を怠らないようにする事が大切です。